FORTUNE ARTERIAL感想vol.1【東儀白ルート終了】

ストーリー   ★★☆☆☆
キャラクター  ★★★★☆



ストーリーは目新しくもなく、さほど感動的でもなく
大したことない。極論を言ってしまえば、僕でも書けます。

・エロ特化型
・感動特化型
・ゲーム性重視型(アドベンチャーやRPGなどの要素を盛り込む)

18禁PCゲームの場合、以上3類型のいずれかに属しているのが
名作の条件だと思います。

フォアテリは、間違いなく感動特化型に一番近いと思いますが、
白ルートはあまりにストーリーがうすっぺらいし
一方でエロに特化したわけでもない。
もちろんゲーム性重視でもないし、中途半端ですね。


キャラクターがこれだけ魅力的でなければ、納得できない内容ですね。


以下ネタバレ含むレビュー。

















【あらすじ】


東儀家という旧家の娘として育った白。
東儀家には、結婚相手は分家から選ばねばならないというしきたりがあった。
その中で、白は主人公の支倉君と恋に落ち、
次第にしきたりと自分の気持ちの板ばさみ状態になり思い悩む。


そして、白は自分の気持ちに正直になり、支倉君と交際しようと踏み切るが、
結果、東儀家当主である兄の征一郎と対立することになる。


東儀家には、例大祭という一大イベントがあった。
その祭の始めに、東儀家の者は舞を舞うことになっていた。
もちろん、征一郎と白もそれに漏れず舞うことになっていた。


しかし、当主として征一郎は、
・支倉との交際をするならば、東儀家の一員として認めない。
 したがって、東儀家の者としての務めである「舞」は、金輪際舞わせない。
・支倉との交際を諦めるならば、「舞」を舞うことを許可する。
以上の二択を迫る。


「舞」は亡くなったとされる両親と白を繋ぐという意味で、
白にとって非常に大事なものであり、支倉とどちらを選ぶかと
容易に選択できるような問題ではなかった。
結局、白は舞うことを諦めるという苦渋の選択をする。


一方で、支倉は自分が白と交際することで、
白と征一郎が仲違いしてしまったことに責任を感じ、
征一郎と白が仲直りできるようにと、征一郎と話す機会を持った。


そのときに、征一郎は東儀家の当主としての立場上、
2人の交際を許すことはできないだけで、
白の兄としての立場では、2人を祝福したいと
考えていることを支倉に伝える。


支倉は、征一郎の気持ち、そして、時折白が見せる
舞への未練を感じ取っていた。


そこで、2人が仲直りするためにも、2人の気持ちを満足させるにも
例大祭では2人が一緒に舞うべきだと考えた支倉は、
白を例大祭に連れて行き、舞を舞わせる。


白と征一郎は、仲違いしていた日々を打ち消すかのような
華麗な舞を見せた。そして、これを契機に2人の間の
関係が打ち解け始める。


そして、征一郎は、東儀家当主としての立場、兄の立場を両立させるために
白を東儀家と縁を切らせ、分家に養子に出すという提案をする。
征一郎としては、先祖代々伝えてきたしきたりも、
妹の白の気持ちも大事であり、その結果の妥協案だった。
晴れて白と支倉の交際は認められることとなった。




【感想】


実際、オーガストはストーリー崩壊で有名という前評判ほどではなかった。
しかし、残念ながら、結構ありきたりである上に、感動ポイントは皆無と言ってよかった。
もちろん、シナリオライターが感動ポイントと考えているであろうところは随所にあったが。


いわゆる18禁のPCゲームは、前述の通り
・エロ特化型
・感動特化型
・ゲーム性重視型(アドベンチャーやRPGなどの要素を盛り込む)

の3類型のどれかに属していることが必要不可欠だと思う。
作品の内容から考えて、ファアテリは感動特化型に近い。
それならば、もう少し感動に拘ってもよかったのではないか。


感動をさせるには、一定の条件があると思う。
今回の場合、兄妹愛、ハードルを越えての恋愛という感動の要件はあった。


しかし、兄妹愛を語るには、あまりに白と征一郎の間の描写が少ない。
確かに現段階での兄妹の絆の深さは分かる。
でもその絆がどのような「歴史」を歩んで生まれたものなのかが分からない。


具体的に、2人が幼い頃からどういう風に互いを支えあって生きてきたのかを
描写していないので、読み手にとっては、その2人の関係は緊密とわかっても
それに感情移入できるほどの情報を与えられていない。


家のしきたりを語るには、その描写が足りない。
分家が関わってくるなり、征一郎が厳格な父にどのような教育を受けたかのような
具体的な回想シーンなどを入れていないために、征一郎の言葉からし
家のしきたりの厳しさを知ることが出来ない。


家のしきたりを乗り越えての白の支倉への愛情を表現したいならば、
そうした描写があって然るべきなのに、それがない。
これでは、感動もできない。


感動させられる前提条件は満たしていながら、
その前提条件を有効活用していないために、
中途半端なシナリオで終わってしまっている。


もしかしたら、全シナリオの中で一番ダメなのだったのかもしれない。
だとしても、これだけの話題作であるならば、最低限のレベルは超えてくれないと困る。


私は今まで素晴らしすぎる作品ばかりしか見てこなかったから
求める水準が高くなってしまったのかもしれないが、
少なくとも、Keyの作品やD.C.シリーズ、TYPE-MOONと比べるとかなり見劣りしてしまう。


ただ、東儀征一郎の
「大切にすべきだと思ったことを守る志の強さ、その凛とした生き方を美しいと思い敬うこと、
 これを代々繰り返していく上で研ぎ澄まされたものがしきたりである。」
という考え方はかっこいいと思うよ。